ユニークなニュータウンライフを創ろう
~共同体から共異体へ~
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皆が同じようなライフスタイルで成長してきた時代から、それぞれが独自のスタイルを持ち、異なることを互いに認め合いながらともに地域社会を形成していく時代に転換していこうというのが、今年の学会テーマです。
このテーマを受けて、今回の一般公開シンポジウムでは多摩に関わる4名の女性から、それぞれの立場・経験から生まれた貴重な提言をいただきました。以下にその要旨をまとめました。

・開催日時:5月23日(土)13:30~17:00
・開催場所:ベネッセ コーポレーション 13階大ホール
・基調講演:「ユニークなニュータウンライフをつくる」
   佐田智子氏(朝日新聞社 総合研究本部 主任研究員)
・パネルディスカッション:
   佐田智子氏
   新井美沙子氏(東京都議会議員/NPO東京ランポ 理事)
   植月真理氏(株式会社ベネッセ コーポレーション 広報室長/多摩NT学会理事)
   布川千春氏(有限会社セルフィッシュネス 代表取締役)
コーディネーター:
   松本 暢子氏(大妻女子大学 社会情報学部 教授)
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【基調講演】
「ユニークなニュータウンライフをつくる」朝日新聞社 総合研究所 主任研究員 佐田智子氏

1.多摩ニュータウンのユニークさ
多摩ニュータウンは、ある時代の国家の意思、先端技術、人々の希望が集積されて人工的に生まれた街。また、その成り立ちゆえに人口構成も団塊の世代に偏っている。この街では、遠距離通勤ゆえに男女の分業が進んだ。結果、男性は生産者として都心で働く一方で、女性は郊外で地域の生活者として市民運動・NPO・NGOなど様々な生活者のネットワークを築き、地域の問題を自ら調整・解決してきた。このネットワークの活動は、郊外で生まれた新しいタイプの政治として注目している。
「ユニークなニュータウンライフをつくる」というテーマは大変結構。しかし、多摩ニュータウンは実態として既にもう十分にユニークなのである。

2.日本社会の変化
団塊の世代が一斉にリタイアすることにより、日本は2015年頃には日本は4人に1人が65歳以上という時代が来る。低成長時代、高齢社会など表現は様々できるが、日本の社会が成熟した“秋の時代”に入るということだ。団塊の世代が生産者から生活者として一斉に郊外の街に帰ってくることで様々な暮らしの問題が生まれるだろう。しかし、生産活動や財政が縮小するなかで従来の政治のしくみでは解決できない。人々は自らのネットワークで調整・解決する新しい政治のかたちが必要になってくる。

3.多摩ニュータウンへの提言
多摩ニュータウンには新しい政治のモデルとそのプレーヤーとしての女性たちが育っている。地域の生活者としては女性が先輩。これから帰ってくる団塊世代の男性を引っ張っていってほしい。
時代を先取り凝縮したユニークな存在である多摩ニュータウンには、新しい地域のあり方を社会にアピールしながら、それが他の社会にどのように役に立ち、自分達も幸せになれるのかを考えていってほしい。

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【パネルディスカッション】

●コーディネーター 大妻女子大学 社会情報学部 教授 松本暢子氏
本日は「ユニークなニュータウンライフ」に取り組むアクターの代表に集まっていただいた。

●朝日新聞社 総合研究本部 佐田 智子氏
 多摩ニュータウンを見て、年を取ってからはここは住みにくいかなと思った。きれいな公園があっても活動範囲が狭くなれば毎日は行けない。エレベーターのない住宅では外に出るのも苦痛。ただ、これは多摩ニュータウンだけでなく全国で起こる問題。
多摩ニュータウンは、まだ元気でやる気があり行動力も社会的経験もある団塊の世代が地域に大量に戻ってくる時代へ10年先行して突入する実験地域だ。これからの人生を半分生産者、半分生活者として暮らしていく人々をどう組織化し、アクターとして役立てていくか考えることが必要だ。

●東京都議会議員/NPO東京ランポ 理事 新井 美沙子氏
 多摩に住んで27~8年になる。市議会議員、NPO、都議会議員と形は変えながら一貫して行政をもっと身近にする取り組みをしてきた。多摩ニュータウンに住む都議会議員は私一人だけ、国会議員には誰もおらず、多摩ニュータウンへの関心をひきつけるにはまだまだ少ない。多摩ニュータウンの問題はコミュニティなどで解決できるソフトの部分以外にハードの問題もある。その解決のためには行政に対して声を上げていかなければならない。多摩ニュータウン学会にはそうした役割も期待する。

●株式会社ベネッセコーポレーション 広報室長 植月 真理氏
 職住近接と生活者の息遣いを身近に感じるためにオフィスが多摩市に移転してきたことが多摩ニュータウンと接したきっかけ。行政に頼るのではなく自立した活動をする人が大勢いるのが魅力。生涯の住処の一つとして意識し始め、地域に関わり始めた。成熟社会におけるユニークなニュータウンライフを発信していくことで、新しい発見をしたり知恵を授かったりすることがあるのではないか。受身的ではなく、能動的に生きるために多摩に住みたい。地域を構成する一員として、企業も意識してもらいたい。

●有限会社セルフィッシュネス 代表取締役 布川 千春氏
 南大沢で街づくりの事務所を8年間続けている。暮らしと仕事が一体になってほしいという、ある種わがままな女性の望みを実現したいという思いをもってプロジェクトに臨んでいる。経済的に大きなリスクを負えないにしても地域の中でできることをしたいという思いを持つ人をネットワーク化することで、事業予算よりももっと大きな仕事ができることを実感している。現在、多摩ニュータウンで得たデータと知識を生かして、ニュータウンの外でも事業を始めている。

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